100年後の石材店へ・・・(5)N.Kさん

拝啓 この手紙を読んでいる石材店の方へ

今、日本の石材店はどうなっているのでしょうか?
とんでもない被害となった東日本大震災から約1年近くが経ち
復興の兆しと今までのツケが回ってきたような感じがする今日この頃です。
一番気になるのは日本で墓石用の石がまだ採れているのでしょうか?
と言うより採られているのでしょうか?
さらに「墓石」という物は存在しているのでしょうか?
昨今のお墓を巡る気運はやれ「自然葬」だの「樹木葬」だのと、お墓が「石」であった事の意味すら無くなってきています。もし「墓石」という物が無くなっていたとしたら恐らく私達の時代のせいかもしれません。

もし「墓石」という物が残っていると仮定して相変わらず口先だけの「石屋」を名乗る人々がまだ大勢いるのでしょうか?
外国にものづくりを任せて、下手すれば組み上げすらせず、右から左へテレビや洗濯機のような家電を売っているような「石屋」が横行しているのでしょうか?
今、この現在でも革靴履いた「石屋らしき」人々が偉そうに「石屋」を語っています。僕は「石屋」である前に「石工」でありたいと思っています。もちろん技術的には本当にお恥ずかしいレベルなのでありますが、「ものをつくる」事をやめてまでこの「石屋」という仕事を続けたいとは思いません。
それでは「石屋」ではあるかも知れないけど「石工」では無いですから。

山で石を採る石工、それを加工する石工、それに文字を彫り、据え付ける石工。
その一部分でも自分が関与していたいと思って今は続けています。
そしてこの様々な行程でそれぞれの「石工」の気持ちを込めて造った物がお客様の手元に届き「お墓」になると信じています。

この手紙を読んでいる方が「石工」であることを願います。

敬具

投稿者:N.Kさん